穏やかな風が頬をなでる、秋の色に染まった北京の街で「北京・日本映画週間2006」が開催され、大きな反響を呼んだ。去年の11月8日から24日まで行われたこのイベントでは、日本の各時代の11本の名画が上映されて、二万人以上の中国の観衆を集め、平均入場者率は92%に達した。いつまでも鳴り止まない拍手の中で幕が降りるのを見つめながら、一人の物静かな美しい女性がほっと安堵のため息をついた。――彼女こそ、この映画祭の企画者であり、日本で活躍する女優でもある耿忠(コウチュウ)である。今回のイベントを成功させるために、彼女はいく晩も眠れぬ夜を過ごしたのであった。

「ラブ・レター」から「LONG LOVE〜遠嫁日本」まで

耿忠は子供の頃からバレエと音楽が好きで、8歳で江蘇省の新体操チームに入り、中国の全国大会で連続6年銀メダルを、アジア大会では銅メダルを獲得した。彼女は1989年に一衣帯水の国、日本へやってきて、日本大学芸術学部で演劇やモダンダンス の創作 を専攻し、卒業後は、その清純なイメージで日本の芸能界にデビューした。

1988年、耿忠は松竹の映画「ラブ・レター」(直木賞受賞作家、浅田次郎の同名小説の映画化)に主演し、その流暢な日本語とすばらしい演技でたくさんの評論家に高い評価を受け、多くの観客の涙をさそった。これによって、耿忠は中国人の俳優として初めて日本の主流の映画で主演を演じるという快挙をなしとげたのである。この作品は文部省のその年度の最優秀映画賞に選ばれた。

1999年、耿忠は日本で自分自身の会社、潟ーランプロモーションを設立し、上海映画製作所と共同で「LONG LOVE 〜遠嫁日本」を企画制作し、自ら女性主人公を演じた。このドラマは、中国の都会に住む三人の若い女性の憧れと追求と挫折、家族や友人との別れ、遠い日本に渡っての結婚、異国での喜びや悲しみと愛憎入り混じった生活を通じて愛情と人生について描いた、まったく新しい感覚の20回の連続ドラマである。

「LONG LOVE 〜遠嫁日本」は初めての日中合作大型連続ドラマで、制作から編集、審査、発表までに、耿忠は三年近くを費やした。これまで長い間、日中両国の生活を描いた連続テレビドラマを放映するのは難しかったが、それは両国の政治、文化、および観客のドラマの味わい方が大きく異なっていたためであった。そのみぞを埋めるため、耿忠はみずから日中各界の専門家やテレビ局を訪問して回り、ついに複雑な文化の違いの中で一つの輝かしい接点を見つけ、「LONG LOVE 〜遠嫁日本」は日本と中国の文化が深く融合した一つの象徴となった。そしてこのドラマは「日中国交正常化30周年記念作品」の栄誉を担ったのである。

アニメの版権から日中映画週間まで

日本のアニメーションが国際的にますます大きな影響力を持つ時代にあって、ムーランプロモーションは「クレヨン新ちゃん」、「ドラゴンボール」、「テニスの王子様」、「銀河鉄道の夜」などのたくさんの優秀な日本のアニメ作品の中国地区における版権を買って、合法的なルートで中国に紹介し、若い人々の視野を大いに広げた。

そして耿忠は言葉では言い尽くせないようなたいへんな努力を重ねて、中国電影集団の協力の下、中国電影資料館と北京電影学院が参与する「北京・日本映画週間2006」を開催した。彼女が寝食も忘れてあちこち飛び回ったおかげで、ついに日本映画製作連盟、および日本の映画界を代表する松竹、東宝、東映、角川ヘラルド映画、東京テアトル、KAGAYA STUDIOなどの協力を得て、長い間日本映画をなかなか見られなかった中国の人々に、すばらしい作品を見てもらう機会を提供したのである。

日、中のメディアは映画週間について熱狂的に宣伝したが、残念ながらその陰に固い信念を持って多くの難関を乗り越えてきた耿忠がいることは あまり取り上げなかった 。

耿忠は、今年は東京で中国映画祭を開催し、来年は再び北京で日本映画祭を行い、日中両国の映画ファンにもっと多くの感動を与えようと計画している。

友好親善から観光親善大使まで

耿忠は自分を常に充実させると同時に、日中各界の民間友好組織が様々な交流活動をするのを常にボランティアで手伝っている。1997年には 名古屋市 長の推薦によって、南京−名古屋友好親善大使となり、それを4年間務めた。2001年には「日本で最も日中友好に貢献した外国人」の一人に選ばれた。

また去年の11月には、日中両国の観光による文化交流を進めるため、張家界市政府が耿忠を、絵のように美しい張家界市の観光親善大使に正式に任命した。耿忠は、日本で張家界の観光イメージを紹介したり宣伝したりするだけでなく、張家界を観光や視察で訪れる日本人のツアーグループを積極的に組織している。

自分の会社の名前について聞かれると、耿忠は思いをこめてこう語った。「小さい頃から、父に代わって従軍した中国古代の女性、花木蘭(ムーラン)がとても好きでした。自分も彼女のように強くて勇敢な女性になり、仕事で男性に負けずにがんばろうと思ったのです。また一人の女性としては、常に勉強を続けることによって自分の精神世界を豊かにしていきたいと思います。女性の美しさは内面から外に発するものだと私は思うのです。」

私の前に坐った耿忠は、物静かで上品で、非常にもの柔らかなイメージであって、私が持っているムーランのイメージとは異なっていた。しかし、記者の質問に答え始めると、彼女の表情はたちまち生き生きと動き出し、その瞳は知的に輝き始め、驚くほど率直かつ直接的に意見を述べてくれた。彼女の柔和な外見の下に、どんなに大きなエネルギーが隠されているのかと、感嘆させられる思いだった。

耿忠は天性の才能とたゆまぬ努力で、日本に住む華人の中でも抜きん出て注目される存在である。体操選手、女優、会社社長、親善大使……、女性特有の親和力と超人的ながんばりで、彼女は人生におけるどの役柄も、軽々と演じこなしているのである。 (劉詩音執筆)

出身:中国・南京市
学歴:日本大学芸術学部、日本女子体育大学
特技:新体操、モダンダンス、社交ダンス、健美気功
趣味:音楽、読書、映画鑑賞、乗馬、温泉
経歴:
【映画】峨眉映画製作所「赤と白」、松竹映画「ラブ・レター」、香港・日本合作映画「 TIME 」など
【テレビドラマ】フジテレビ「ドク」、日本テレビ「西遊記」、日中合作ドラマ「 LONG LOVE 〜遠嫁日本」、南京テレビ「恋恋不舎」
【バラエティ】フジテレビ「ジンガイ記者クラブ」、「笑っていいとも」、 TBS 「ここがヘンだよ日本人」、 NHK 「ときめきワールド」、「歌謡音楽祭」、「耿忠健美法」シリーズ、国土交通省「 YOKOSO JAPAN 」東北編宣伝番組出演など
【司会】日中政府共同開催の 2002 年「日中国交正常化 30 周年記念」レセプション中国側司会者、駐日本中国大使館主催「在日新旧華僑聨合会」成立大会司会、中国文化部主催「日中文化交流貢献賞」表彰大会司会、 2006 年上海国際映画祭東京映画週間開幕式司会など
【舞台劇】2006 年 5 月、日本の舞台劇「夢−歌舞伎町物語」に主演
【CM】日本マクドナルド、明星食品、タニタ体重計、花王石鹸、国際電話 0061 、赤見電機スーパーライザのイメージガールなど

耿忠のブログ http://kochu.livedoor.biz/

Copyright 2005 -2007 Tokyo-fashion.net all rights reserved.