日本のロボット業界を論じるとき、ロボットに姿かたちを加え、生命を吹き込むロボットデザイナーを紹介しないわけにはいかない。ロボットデザイナーを紹介するとき、この未開拓分野の先兵である松井龍哉もまた避けては通れない。
松井龍哉は1969年東京生まれ、1999年北野共生システムプロジェクト研究員として初めてロボットデザインに携わり、ヒューマノイドロボット「SIG」「PINO」でグッドデザイン賞を受賞した。その後「フラワーロボティクス株式会社」を設立し、数々のヒットロボットを世に送り出してきた。
「PINO」は幼児を模して作られていてヨチヨチ歩くことしかできない。「力強くて逞しい」ロボットの固定観念を払拭し、人間と機械の「弱さ」をテーマにしている。宇多田ヒカルのプロモーションビデオにも登場している。
「Posy」はフラワーガール(結婚式で花嫁のサポートを行う)をモチーフにしている。3歳の女の子の設定で、天使の象徴として人々に幸せの一端を分け与えるイメージである。2001年、ルイ・ヴィトンのショーにも出演している。
「Palette」はマネキンロボットで、ショーウィンドウの前を通る人の動きを感知して、その方向に合わせてポーズをとる。イタリアの科学館での永久展示が決まり、表参道にあるルイ・ヴィトンのショーウィンドウにも展示されている。
「Posy」のコンセプトであるフラワーガールや、社名の「フラワー・ロボティクス」に花が共通している。松井龍哉はロボットを「心のパン」、「人を幸せにする存在」、「人間が愛情を抱く対象」と捕らえていて、人類と共生してきた花にイメージを重ねていたのである。いつかオペラ座でプリマドンナと踊るロボットを作る日を夢見ている。(C)Flower Robotics Inc.
●Flower Robotics http://www.flower-robotics.com/
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