これらの情報をもっと多くの人と共有するために、小山さんは2000年に「渋谷電脳リサーチ(shibuden)」というサイトを立ち上げた。当時、ファッション業界のIT普及率は低く、ネットで情報を検索するデザイナーは非常に少なかった。ところが新しいものに敏感な若者たちがネットサーフィンでファッション情報を探していて「shibuden」を発見し、閲覧者は次第に増加していった。
時間が経つにつれて、ファッション業界でもネットの使用が普及し、ネットで企画を行ったり顧客とやりとりしたりするようになった。この頃には、「shibuden」はすでにかなりのアクセス数を記録し、専門家からも一般の閲覧者からも高い評価を受けていた。小山さんにとって「shibuden」は宝であると同時に、仕事の武器でもあるのだ。
外国のデザイナーやファッション愛好者にも、「shibuden」によって日本の最新のストリートファッションをリアルタイムで伝えたいという考えから、小山さんはストリートリサーチを日英二ヶ国語表記で行うことにした。海外からの閲覧者が増加するにつれて、小山さんはこう考えた。「日本のストリートリサーチを見に来る人の多くは、日本のファッションを好むエンドユーザーなのではないだろうか?」この考えがどんどんふくらみ、彼はこれらの人々を対象にした個人ファッションブランドを立ち上げることを決意した。
ストリートリサーチの資料は、ネット化によって速報性を獲得した。常に「shibuden」を見ていれば、毎日同じように思っていた都市や人々が、実は急速に変化していて、街の流行の変遷は想像以上に速いということがわかるはずだ。そしてインターネットがあるために、最も新しい一日を捉えることができるのだ。