東京駅の不思議な実験
日本を訪れる外国人にとって、通勤ピーク時に駅の構内に人が溢れる情景は印象深いものがある。この人間たちのエネルギーをうまく利用して、何かすることはできないものだろうか?
10月16日から12月中旬まで、JR東京駅では乗客が改札口を通過する時の振動を利用して発電するという不思議な実験を行なった。その目標は、「乗客が歩く力だけで自動検札機を動かす」ことである。
これはJR東日本と慶応大学が共同開発したシステムで、「圧電素子」と呼ばれる、振動によって電力を引き出す装置を地下に埋めて「発電床」を構成する。直径3.5センチメートルの鉄の円盤である「圧電素子」は、一般のスピーカーに使用される材料である。「発電床」は音楽用のスピーカーと同じ原理であるが、スピーカーとは逆に乗客が床を踏む時の振動から電力を取り出すという仕組みになっている。
丸の内北口の通行者が比較的集中する6つの自動改札に、この実験装置が設置された。一人の乗客が改札を通過するごとに、約70〜100ミリワットの電気が発電され、改札口側面に設置したパネルに実際の発電量が表示される。東京駅は毎日約70万人が利用するが、全改札に設置しても発電量は100ワットの電球が10分間点灯する約70キロワットに過ぎない。今後は、発電効率をいかに高めるかが重要な課題である。
床を踏むと直ちに電力が表示されるために、太った乗客がいやがらないだろうかと心配する声もあった。だが実際は、発電と重量あるいは重力とはあまり関係がなく、床を力いっぱい踏むよりも圧力を受ける「圧電素子」の個数を増やすほうが発電効果が高まるのだそうだ。皆さんが今後東京駅の改札を通る時は、歩幅を小さくすることをお勧めしたい(笑)。 |