世界規模の経済危機の影響で、これまで発展を続けてきたペット関連市場はいくらか停滞する傾向もあるものの、室内犬ブームは依然として過熱を続けている。愛犬家の中には、ペットがすでに生活の一部分になっているばかりでなく、可愛い「彼」や「彼女」のためなら大金を出すこともいとわないという人までいる。ペット病院やペット関連サービスの販売額が増加を続けていることが、それを証明していると言えるだろう。京セラドームで行われる日本最大規模のペットイベント「ペット天国」には、毎年5万人以上が参加するという。
ペットを自分の子どもや最愛の恋人のように考える飼い主がますます増加しており、ペット用品の「人間化」も進んでいる。特におやつなどは、テーブルに並べておいたら本物と見分けがつかないほどだ。去年の9月にT-REXが販売を開始した「わんちゃんのたい焼き」は、愛犬の健康を考え、一般のたい焼きより餡が少ない。価格は198円と一般のたい焼きよりも30%ほど高いが、毎月の販売量は3万個にもなっている。水分が多いリゾット風のドッグフードや、本物のハンバーガーそっくりの「ワンバーガー」などもあるが、犬たちは食欲がそそられるだろうか?ペット用の衣類もブランド志向になっている。ショッピングセンターを歩いていて、色も形もすてきなグッズに引かれて店に入ってみたらペット用品の店だった、という笑い話もよくあることである。
ペットのためにデザインされたアクセサリーや、ビーズで作られたリードなどの販売量も増加している。犬を室内飼いにすると犬の口臭が問題になるが、普通の歯ブラシで犬の歯を磨くと、ブラシ下部のプラスチックが歯に当たって、犬にとっては不快である。そこで、360度のブラシがついている犬用歯ブラシが登場した。1本714円だが、毎月5000本も売れるそうだ。過度の溺愛は愛犬をわがままにしてしまう。わがままな犬に頭を痛める飼い主は、犬をしつけ教室に通わせることになる。大手チェーンのペットショップのコジマが運営する施設の利用者は、2ケタの伸びが続いている。世界最大規模の犬のしつけ会社「バークバスターズ」が発売した、犬の問題が再発したら無料でケアする「一生涯保障」サービスの人気も高まっている。
どうやら溺愛や過度の教育、生活環境の改善などは、もはや人間だけの問題ではなくなっているようだ。愛犬を家族の一員とし、家庭に入れたその日から、必ず必要なことは何だろうか。そしてどこからがやり過ぎなのだろうか。最もよい結論を導き出すには、しばらく時間ががかかることだろう。(緋梨執筆)